シャンパーニュ訪問報告お食事会@シノワ渋谷 vol 3. キャラ立ち抜群のジャック・セロス、ド・スーザ&エリック・ロデス

<<前回はグラン・メゾンのN.V.の深さに迫ってみました

 

さあ、お次のフライトは個性派レコルタンのグラン・クリュ&単一品種N.V.ばかりを揃えてみました。

 

2nd  flight 「人」と「テロワール」のキャラ立ちを味わうレコルタン
・N.V.  エリック・ロデス・ブラン・ド・ノワール(アンボネイ)
・N.V.  ド・スーザ・キュヴェ・ド・コダリ・ブラン・ド・ブラン・ブリュット(アヴィーズ)
・N.V.  ジャック・セロス・イニシャル・ブラン・ド・ブラン・ブリュット(アヴィーズ)

 

個人的に最も力の入ったこのフライト…というのも、シャンパーニュ初訪問で、普段”テロワール”ワインを好んで飲んでいる身としては、レコルタンの主張とそのワインは非常にわかりやすい! 感情移入がしやすい!

 

ロデスのB de Nはアンボネのピノの暖かみ、柔らかさ、厚み、品格が良く出ていました。ベースワインの小樽発酵&熟成とレコルタンとしては多年度のリザーヴ使いに特徴のある彼のワインには、更に独特の円やかさと深みがあり、メニルやアヴィーズの堅固なミネラル感溢れるブラン・ド・ブランと好対照。この暖かさと懐の深さが気に入った人は是非上級キュヴェ”Grands Vintages"を飲んでみて下さい。エリックの強調していた”センシャルな味わい”の何たるか、が更に腑に落ちるはずです。

スーザとセロスはどちらもアヴィーズを中心としたコート・デ・ブランからの自然農法ブドウを用いたもの――の割に、大きなスタイルの差があります。同種のミネラルでもスーザのものは実に柔和でしなやか(Full MLFが影響?)。派手さに欠けるものの、しみじみと優雅にじんわり美味しい、自然体のワインです。

セロスは剛直でエネルギッシュ。とは言うものの、現地で飲んだ時ほどガチガチではなく、この晩の方が美味しく感じられました。瓶熟したのでしょうか。必要ないとは思いつつ、彼のセラーでやったように水を一滴垂らしてみると、味わいがまとまるにはまとまるものの、多少ボケる印象すら出てしまいました。

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シャンパーニュ訪問報告お食事会@シノワ vol.2 ドゥーツ&ボランジェのアッサンブラージュの秘密はどこに?

<<前回はお食事会の全体的反省でした

 

今日は最初のスタンダードN.V.のフライトを振り返ります。

訪問8メゾンからひとつずつワインを選ぶ作業にあたって、考慮したのは以下の3点;

1.そのメゾンらしさ(技量とテロワール)が最も良く反映されているもの

2.同一価格帯の中でなるべく美味しいもの、コスパの高いもの

3.シャンパーニュの全体像を掬えるよう、クラスやスタイルにできるだけヴァラエティーを持たせる


格の上げ甲斐のある生産者――つまりクラスを上げることでテロワールや技量のアピール度が段違いに上がる生産者については、なるべく上のクラスを出すよう心掛けました。で、このような顔ぶれに。

 

1st  flight シャンパーニュの極意はアッサンブラージュにあり

・N.V.  ドゥーツ・ブリュット・クラシック(アイ)
・N.V.  ヴィルマール・グラン・レゼルブ(リリー・ラ・モンターニュ)
・N.V.  ボランジェ・スペシャル・キュヴェ(アイ)

 

さて、シャンパーニュというものは、普通のワインとは全くコンセプトの異なるお酒です。

ブルゴーニュに代表される通常のスティルワインの場合、畑の範囲を狭く特定すればするほど格が上がる訳ですが、シャンパーニュの肝は複数品種、年号、畑区画間のアンブラージュ(=ブレンド)にあります。実際シャンパーニュ全生産量の9割がN.V.だそう。

 

アッサンブラージュの妙味を楽しむ、という観点に立つなら、グランメゾンの方が規模の小さなレコルタンより圧倒的有利であることは自明。絵を描く際の絵の具の色数を想像してみて下さい。…という訳で、2つのネゴシアンがこのフライト入り。

ドゥーツは優雅で品の良い抑制の効いた美しい個性、一方ボランジェはなんと240ものベースワインと、およそ半分を占めるリザーヴワイン、蔵全体でトータル500にも上るエレメントのアッサンブラージュにより、チェリーやオレンジ風味漂う陽性で暖かみのある個性、――両者それぞれのハウススタイルを見事に描き切っていました。

そしてレコルタンのクリュッグと呼ばれるヴィルマール。ピノで名高いモンターニュ・ド・ランスにあって、上級キュベはおしなべてシャルドネの比率が高い。期待していたのですが、現地試飲においてはクラスを上げる必然性が最も希薄だったため、ピノ優勢のN.V.での登場。味わいをコントロールすべく100%MLFするドゥーツとボランジェに挟まれると、MLFを全くしないヴィルマールのワインは、良くも悪くもワインの果実味が鮮やかで生々しく感じられます。

 

ところで、グラン・メゾンでの試飲に際して、どの村のブドウがどれくらいの割合で使われているかについては、グラン・クリュ&1erクリュの比率以上詳しいことは一切聞けませんでした。が、現地訪問を振り返り、こうして今一度グランメゾンものを味わいながら、俄然気になって来ているのは、モンターニュ・ド・ランスのグランクリュ、しかも北や北西向きのピュイジュー、シルリー、ボーモン・シュル・ヴェル、マイイ・シャンパーニュ、ヴェルズネイ、ヴェルジーといった村々のこと。これだけの高緯度でしかも北向き…、黒ブドウ生育にとっては信じ難い劣悪生育条件だぁ!!! 

しかーし!!

単体ではコート・デ・ブランのメニル・シュル・オジェやアヴィーズのシャルドネ、そしてモンターニュ・ド・ランスのアンボネのピノようなスター・キュヴェを生み得なくとも、アッサンブラージュの一要素として極めて重要な役割があるのではないか? と、思い至るようになりました。

寒冷産地北向き斜面のピノだなんてあなた、相当ねじくれたクール・ビューティーに違いありません。カストラートの怪しくも透明な高音にでも喩えましょうか。ゾクゾクしませんか?

遠目には落ち着いたブラウンのツイードを織る際に、単色で重要でなくても、奇抜に見える色であっても、織り上がり全体のナチュラルな色調のために必須な、真っ赤やブルー、緑の色糸、ってのもあるじゃないですか? 

超メジャーのグラン・メゾン・シャンパーニュを相手に、あまりにマイナーな目線!…って突っ込みも甘んじて受けます:) 。

ま、斯様に深いのですよ、グランメゾンのN.V.はむしろレコルタンより。…でありながら普段あまりワインに馴染みのない人々までが「取りあえず泡」と、なーんにも考えずにオーダーするのがこのクラス。勿体ない話だ…。

 

再度シャンパーニュを訪れる機会があれば、是非とも北向きグラン・クリュにあるレコルタンを訪ねた上で、グランメゾンのアッサンブラージュでどんな役割を果たしているのか追及したいなぁ、と思っています。

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シャンパーニュ訪問報告お食事会@シノワ渋谷 vol.1 ああ、しまった!

<<前回はお食事会の予告でした

 

訪問した8メゾンからひとつづつ選んでのシノワ渋谷でのお食事会のご報告。昨日のブログでボトル写真を載せておきましたが、改めて贅沢に色々飲んだもんだ…。

 

1st  flight シャンパーニュの極意はアッサンブラージュにあり
・N.V.  ドゥーツ・ブリュット・クラシック(アイ)
・N.V.  ヴィルマール・グラン・レゼルブ(リリー・ラ・モンターニュ)
・N.V.  ボランジェ・スペシャル・キュヴェ(アイ)

2nd  flight 「人」と「テロワール」のキャラ立ちを味わうレコルタン
・N.V.  エリック・ロデス・ブラン・ド・ノワール(アンボネイ)
・N.V.  ド・スーザ・キュヴェ・ド・コダリ・ブラン・ド・ブラン・ブリュット(アヴィーズ)
・N.V.  ジャック・セロス・イニシャル・ブラン・ド・ブラン・ブリュット(アヴィーズ)

 

3nd  flight 新旧革新者の頂点を味わう 
・2004 ジャクソン・ディジー・コルヌ・ボートレイ(ディジー)
・1996 サロン(メニル・シュール・オジェ)

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久々のワイン会、お題はシャンパーニュ。その心は?

<<前回はモリッツ&ウヴェ発見者の思いでした


今回は4年振りのクリスマスとお正月を家族水入らずで楽しみたかったことと、諸々の事情でスケジュールが立てられなかったこともあり、2か月の長い滞在中ワイン会は今晩シノワで行う、昨秋のシャンパーニュ訪問報告お食事会のみ。

3つのフライトに分け、「シャンパーニュの絶大な人気に客観的根拠はあるか」について、訪問全メゾンからひとつづつワインを選び、実に贅沢なラインナップでお届けします。

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おお、モリッツもウヴェも大人気だぁ!!

<<前回はシャンパーニュのお題でした

 

私用に忙殺されてご無沙汰だったfacebookを久々に覗いてみると、来日していたモリッツMoricと昨年初めてそのトップ・キュヴェであるライーブルクReihburgが日本市場に紹介されたウヴェ・シーファーUwe Schieferの話題が満載!! 

彼らのワインが日本市場でも非常に高く評価されていることに、2人をインポーターさんにご紹介した超本人として感慨も新たにしたところです。紹介者なんて地味なもので、世間に受け入れられてしまえばその存在は忘れ去られるのが常。誰も誉めてくれないので、ここで自画自賛しておくとします: )。

二人についてはこのブログにも色々書いていますので、オーストリアワイン・ファンの皆さん、ピノや優美なバローロ、懐の深いローヌ好きの皆さんは、是非リンクを覗いてみて下さい。一層ワインが味わい深く感じられることでしょう。

 

モリッツ関連リンク;

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ローラントの弟子とも言うべきHannes Schusterのワイナリー、ロージー・シュスター関連リンク;

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ウヴェ・シーファー関連リンク;

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思い起こせばオーストリアワイン応援団長を自負して既に10年以上。オーストリアを拠点とするまでは主にジャーナリスト&エデュケーターとして、11年春以降はエージェントに軸足を移して応援して来ました。そもそも商売として何の展望もなく始まったこのオーストリアワイン贔屓。自分の応援しているものが少しずつメジャーになれば、自然と応援活動が職業的好循環をもたらす、とナイーヴに信じて来たものの、そんなに世間は甘くない、単純でもない、と痛感すること幾千回 …。

その一方で、言葉もロクに通じず、配偶者も雇い主も個人的な友人も貯蓄も定収入も、お城を出てからは定宿すらない、ないないづくしの環境で、どういう訳か毎日の暮らしを、むしろ日本にいた頃よりも、深く慈しみ楽しむ術を身に着け、最近はヨーロッパ全体の文化や社会について、その成り立ちやら歴史の裏舞台の痕跡を肌で感じられることが面白くてたまらず、「ワインが私をここまで連れて来てくれたのだなぁ」と、しみじみ別の感慨に耽ることがあります。

 

…で、思うのですよ。

元々私がMoricやUweのワインを発見できたのは、部外者として何のしがらみもなく、生産国や風評、権威に対する色眼鏡なしでワインを評価する姿勢があったから。もし最初からオーストリアのワイン業界にドップリと浸かり切っていたなら、恐らく雑音が多過ぎて、或は主流派が見え過ぎて、業界の異端中の異端である二人に虚心に向き合うことは難しかったかも知れませんし、世界のワインメディア広しと言えども私が言い出しっぺと自認する”エレガント・ブラウフレンキッシュ”の潮流も、こうしてその流れが立派にインターナショナルに認識されるようになるまで、探り当てられなかった可能性もあります。

…であれば、ここはつまらぬしがらみからはちょっと身を引き、オーストリアワイン応援団長の殻も脱ぎ捨て、もっと今、自分が本当に面白いと思うことにコミットしよう、と考え始めました。私が就職した当時のルールに従えば、もう去年で引退の身。既に余生みたいなものですし:)。

 

では、一層とっちらかるであろう酔狂なオバサンの発見や閃きに、今後もゆるゆるとお付き合い下さい。

 

次回はシャンパーニュがテーマの久々のワイン会のお知らせです>>

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エリック・ロデス――アンボネの哲学者

<<前回は大好きなレコルタン、ド・スーザの訪問記でした


スロヴェニアの旅に出て以来のご無沙汰…。その後旧友とディープなウィーンを垣間見、4年振りに日本でクリスマスと新年をゆっくりと過ごし…そうこうしているうちに、すっかりブログから遠ざかってしまいました。そうそう、シャンパーニュ巡りのご報告も途中のままでした。

 

遅ればせながらここで新年のご挨拶をさせていただき、ブログも再スタートすることとします。今年も皆さまどうぞよろしく!

 

さて、ジャクソンとド・スーザを訪ねた翌日に訪問したのは、モンターニュ・ド・ランスはアンボネの鬼才、エグリ・ウーリエの好敵手レコルタン、エリック・ロデス。

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ド・スーザ――ソレラシステムはセロスの専売特許に非ず

<<前回は私の住む町バーデンのカイザー・フランツ・ヨーゼフ博物館の話題でした

 

さて、アヴィーズで2つ目の生産者はド・スーザDe Sousa。元々ポルトガルの家系で、当主エリック・ド・スーザは3代目。駆け足の訪問でしたが、彼と長女のシャルロットが我々を案内してくれました。

 

エリックの語った、ド・スーサの特徴は以下の4つ;

1.テロワール

アヴィーズでは20cmも掘ればチョークが出現する(アンモナイトの化石や水晶も出土)

2.古木:

ド・スーサのラベルでボトリングされるものは、Brut Traditionでも最低樹齢20-30年。プレスティージュものは50年以上。中には70年以上のものも。

3.熟成:

原酒はオークの樽(新旧)で熟成。その後瓶熟は最低3年以上

4.ビオディナミ:

2000年よりオーガニック転換開始。2007年に完全に有機となる。2010年オーガニック認証。2013年デメター認証。

ビオディナミと一言で括られるものの、実態は様々。ド・スーザの土に対するこだわりは、ウエブサイトのビデオに詳しいので、興味のある方はご参照のほどを(耕作に使う馬にも名前がついているのが可愛い

http://www.champagnedesousa.com/en/videos.html

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ジャクソン Jacquesson――円熟の”ニュージェネレーション” 前篇 コルヌ・ボートレ畑にて

<<前回はウィーンのビアパブのお話でした

 

さて、我々がド・スーサの後に訪れたのは、ジャクソン。

アイより更に西、正真正銘Vallée de la Marneにある、おそらく規模としては決して大きくない、しかし品質的にはここ10年余りの躍進の最も著しいネゴシアンの最右翼です。

 

いかにも”フランス男な容姿”の当主ジャン=エルヴェ・シケ氏(+(弟のローランで経営)は、「畑を見たい」という我々の要望を叶え、到着するとすぐに、10月1日が正しくシャンパーニュ全体でも最終日、という収穫真っ最中の看板畑コルヌ・ボートレCorne Bautrayに連れて行ってくれました。

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ジャック・セロスで謝られるの巻  その4 ソレラでデゾレ…

<<前回はシュテファン大聖堂ワインお披露目報告前半でした

<<この話には前篇その1その2その3があります

 

そうですよ、ソ・レ・ラ!! 

…一体最初に見た小&中樽の並ぶ中にソレラが潜んでいたんだか、別の場所に隠されているのか…?

とにかく一目、Substanceを生むソレラをこの目で見ないことには、わざわざエアフラのストを押して、遥々バーデンから電車➡飛行機➡TGV➡メトロ➡TGV➡ローカル電車➡タクシー、と乗り継ぎ、丸一日がかりでようやくここまでたどり着いた甲斐がありません!!!

 

納得行かない私は、ホテルに戻ろうとするセロス氏を捕まえて、「済みません、最後の質問です。有名なソレラ・システムはどこにあるのですか?」と、尋ねてみました。

すると踵を返した彼は、セラーとは別の倉庫の大きな鉄扉を開け、中に我々を通してくれました。

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ジャック・セロスで謝られるの巻  その3 魔法の一滴

<<前回は「10月22日はオーストリアン・ゼクトの日」のお知らせでした

 

さて、アンセルム・セロス氏直々のツアー後半はセラーでのテイスティング。


最初に味わったのがInitial Brut NV

暗がりでわかりづらいとは言え、色も随分濃いし、シャンパーニュとしては異例に豊かで野太いノーズ。旨みとミネラルが半端なく、余韻も非常に長い。とにかくひたすら力強いお酒。私の聞き間違えでなければ、粘土土壌のブドウを多く使っている模様。そのせいか、決して抜けがいいとは言えない。

 

2番目はVersion Originale Non-Dosé NV

Initialより透明度の高い香味。テクスチャーもより滑らか。しかし味わいは、塩&ミネラルを感じさせる、より直截的で厳格なもの。余韻が綺麗。クラマンの南向き斜面のブドウを多用しているらしい。ノンドセでここまで奥行のある味わいが出せるって凄い!

 

3番目はMillesime 2003

同じ年のアヴィーズの2つの畑から半分ずつブドウをブレンドしたもの。ああ、この酸化したノーズ…いかにもセロス的。味わいは、低ドサージュと思えぬほど、甘さをはっきり感じる。砂糖を焦がしたようなニュアンスも。閉じていて固く、ボンボンを口に咥えているような後口。あまりに非典型的シャンパーニュ。

 

…と、何やらセロス氏がガラス棒を取り出し、プラスティックボトルの液体に棒先を漬けると、液体の雫をほんの一滴ずつ各人のグラスに垂らして行きます。

 

すると、摩訶不思議。液体を一滴垂らしたグラスから再び同じワインを口に含めば、キャンディーのように凝り固まっていた味わいが、すーっと拡がるではありませんか!!! 


で、液体の正体は??

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ドゥーツDeutzにシャンパーニュの粋を見る

<<前回はシュテファンスドームお披露目のお話でした

 

セロスを訪ねた翌日は、午前中にセロスの畑を見学し、午後はアイにあるドゥーツへ。

この中堅メゾン、清潔で品の良いスタイルが結構好きなんです。

 

案内をしてくれたブラジル出身のバロッソ女史によると、ネゴシアン・マニピュランの中で、ドゥーツの規模は中の下くらい、とか。ほぼ年産2百万本――つまりボルドーの平均的グラン・クリュの7-8倍の規模――でもそんなものなのか…と、改めてシャンパーニュ・メゾンの規模のバカでかさに溜息。


最初に案内されたのが創業2代目ウィリアム・ドゥーツ当時の調度そのままの応接間。クラシカルだけれど変にギラギラしない趣味の良さ。お庭に出れば、ナチュラルなイギリス風庭園で、光と風の戯れる様が心地よい。

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ジャック・セロスで謝られるの巻  その2 セラー・ツアー

<<前回はレザヴィゼで遭遇したセロス氏の素顔についてでした

 

楽しみにしていたセロス氏自身によるセラー・ツアーとテイスティングのはじまり、はじまり!

予想通り熱い人で、ツアーも非常にエネルギッシュかつかなり専門的。それもそのはず、出席者の面子は豪から来たワインメーカー、イタリア(だったかスペインだったか)のレストラン経営者、そして我々…つまり全員プロ。いや、この人、おそらく相手が誰であっても同じように熱く語るんだろうなぁ。テロワールとは、自然農法とは、自然なワイン醸造とは、みたいなことを語っている…

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ジャック・セロスで謝られるの巻  その1 レザヴィゼでの素顔

<<前回はシャンパーニュに持っていた偏見と回心についてでした

 

ま、そんな訳で避けて通っていたと言っていい産地でして…。

シャンパーニュってお高い産地で、生産者もお高くとまっていて、テクニカルな質問になぞきっと真面目に取り合ってくれないのではないか、とも危惧してたんですよ。

 

杞憂でした!!!

G氏夫妻の宿泊する、アンセルム・セロス氏経営のホテル”レザヴィゼ”に到着すると、レセプションのPCで何やら事務仕事をするセロス氏ご本人といきなりのご対面!! 

PCを叩いていても、鋏や携帯を握っていても、その手はまさしく農民の――ジャガイモのようにゴツゴツと丸っこい、節々の盛り上がった――手。

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懺悔――シャンパーニュってピンと来てませんでした:)

<<前回は遂にちゃんと訪問地の畑をお見せしました

 

…で、もうバレバレだと思うのですが、エペルネ1泊、ランス2泊、その後パリに2泊(格安チケットが取れる日程に合わせて激安宿に延泊した方が安くついたため)して戻って来た、というが行程でした。

フォーの名店近くのベトナム料理店はパリ13区の”Indochine"、人気の大型食品店はパリ6区のBon Marche内、意外に美味しかった魚ビストロはランスの”Bocal”、そして訪問目的地は、恥ずかしいくらい超メジャー産地シャンパーニュだった、というのが正解です。

ワンちゃんと砂糖菓子に喩えた海棲生物の化石はDe Sousa, 伊勢丹の広告のあったメゾンはDeutz、その下の写真奥に小さく見える畑はKrugのClos d'Anbonnay、収穫最終日のシャルドネの畑はJacqesson、自分の畑の向かい側の未収穫のピノの畑を嘆いていたのはEric Rodez…、がここまで小出しにして来た立ち寄り場所の数々。

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ボルツァーノ その2 二重言語都市の趣や如何に?

そもそもプリンセスはアルト・アディジェ(=南チロル)を「アルプス山中にある冷涼産地」と勝手に信じ込んでおり、冷涼産地としては「どうにも腑に落ちない」所だと感じていました。

…というのは;

1.これまで味わったアルト・アディジェのワインの冷涼度は、ドイツやオーストリア、アルザスにすら遠く及ばないのを不思議に思っていました。

2.正真正銘アルプス山中の産地で、多くのワイナリーがカベルネやメルロといったボルドー系品種を造り、それがまた結構なレベルのワインであることも不可解でした。

3.さらなる謎が、日本に入っているトップワイナリーが、テルラーノ、トラミン、コルテレンツィオ、St ミケーレ・アッピアーノなどの協同組合であること。協同組合でなくともアロイス・ラーゲデアやホーフシュテッターなど規模の比較的大きな生産者ばかり。尖った小規模生産者は存在しないのでしょうか?

 

往生際の悪いプリンセスは、現地の土を踏みボルツァーノが亜熱帯と判明しても、それでもなお「ワイナリーとその畑は、街周辺のより標高の高い(=気温の低い)山々の斜面にあるはずだ」と固く信じ、『アルト・アディジェの冷涼ワイン』を諦めていませんでした。依然狙い目は酸とミネラルを主体とした冷涼感溢れる白。付録としてエレガントな赤…。それもエッジーな生産者のものがあるといいなぁ…、と。

 

一方でアルト・アディジェの特殊な歴史――中世以来のドイツ語文化圏で、第一次大戦後イタリアとなるまではハプスブルク帝国の一部であり、それ以降、そして今も伊独二重言語地域である――にも惹かれていました。早い話が「ハプスブルク文化の優雅とイタリア文化の洒脱の合体した、とっても素敵な場所なのではないか」と期待していたのです。ラテンとゲルマンとスラヴの交差するトリエステも思った通り趣深い街でしたしね。

 

折しも南チロルはワイン祭りの真最中。ボルツァーノのパブやらワインショップを冷やかし、イベントバスに乗り込んで集中的に色々な生産者を訪ねることで、車窓からできるだけ町や畑の様子を観察し、少しでも多くのワインを味わうことにしました。

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ボルツァーノ その1 やっぱり実際に行ってみないと…

ヴェローナからボルツァーノへ電車で向かったプリンセス。

不思議なことにヴェローナ駅には、入口正面のメイン切符売場脇の奥まった場所にÖBB(謂わばオーストリアのJR)Deutsche Bahn(ドイツのJR)合体の切符予約&販売専用のブースがあり(当然ドイツ語が通じます)、そこで切符を買えば、普段オーストリア国内で使っている割引カードが一部適用されることを発見。ラッキー! 

…と喜びつつ、ヴェローナという場所が、いかにドイツ語圏(特にドイツとオーバーエスタライヒ)からイタリアへの窓口として重要な位置にあるかに改めて気づかされます。

 

ところでプリンセスの今回の旅は、旧ハプスブルク帝国内の主要ワイン産地の文化風俗に触れることが目的でした。食というものはあらゆる文化の中でも最も保守的なもの故、ハプスブルク時代の尻尾が思わぬ場所や料理、飲み物に残っているかも、という期待もありました。

 

ウィーン→グラーツ(シュタイヤーマーク)→トリエステ(フリウリ・ヴェネチア・ジュリア)→ヴェニス→ヴェローナ(ヴァルポリチェッラ)→ボルツァーノ(トレンティーノ・アルト・アディジェ)→ザルツブルク(ここはビール)→ウィーン――という順序でグルリと電車で回ったのですが、無学なプリンセスは「全訪問地の中で一番寒い場所がこのボルツァーノのはず」と勝手に思い込んでいたのです。

ヴェローナからボルツァーノへは一方的に北上する訳だし、ドロミテ山塊のど真ん中にあるからには恐らく1000mに迫る標高のはず。ここでググーンと気温は下がるのだろうなぁ、と想像していました。

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ヴァルポリチェッラは楽しい その3 サラミで納得!

ヴァルポリチェッラに滞在している間中、プリンセスは「何故ローマ(一説によるとギリシャ)時代の昔から、この一帯ではブドウを乾かしてから醸造するという手法が定着したか」について思い巡らせていました。勿論、訪ねた5ワイナリー全てで、バカの一つ覚えの如く同じ問いを繰り返してもいました。

曰く「コルヴィーナの弱いタンニンを補う」「長期熟成タイプのワインとしての物性的&味わい上のバランスを得る」「風味を凝縮させる」…。どれも正しいのでしょう。

でもそれなら、ブルゴーニュでもピノのアパッシメントが伝統製法として普及しても良かったはず…。

 

…釈然としないまま、ネグラール最後の朝を迎えます。

連日素朴ながら美味しいお手製の食材の数々が並ぶ朝食のテーブル。

…そうそう、これです、これです! プリンセスがぞっこんの半生サラミ!!

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ヴァルポリチェッラは楽しい!その3 クインタレッリ強襲 part2

さあ、Quintarelliでのテイスティングの始まり、始まり!

 

最初のワインはBianco Secco 2011。ガルガネーガ、トレッビアーノ、SB、CHなど5品種から造られるクインタレッリ唯一の白ワイン。

柔からな酸、芳醇な果実味…やはり北のワインとは一味違います。最高のブドウ造りに労力を注ぎ、醸造は極力自然に任せるシンプルな技法が味わいからも伺える素直さと奥行。一口で言えばすっきり円やかな個性。

 

プリンセスの目はワインを注ぐフランチェスコの、揺るぎない動きにくぎ付け。そして口と頭は柔軟で伸びの良い、粒子の細かい、優しくて深く芳醇なクインタレッリ・ワールドに沈潜。

…その結果、この最初のワインからテイスティングが終わるまで、彼がワインについて何を語ったのか、語らなかったのか、プリンセスのノートには断片的な単語が少数書きつけられるのみ

 

何はともあれ、フランチェスコのお手前を思わせる美しい所作をご覧いただきましょう! 隣席のVIP顧客が「御爺さんと全く同じ注ぎ方だね」と嬉しそうに頷いていたその所作を。

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ヴァルポリチェッラは楽しい! その2 クイタレッリ強襲 part1

そうそう、イタリア訪問記が途中でプッツリ途絶えていることに今気づきました。早速挽回します : )

 

ヴェローナに入りB&Bへ向かう車の中で、オーナーのパオラがなんとあのクインタレッリに翌朝のまさかの訪問アポを入れてくれてしまったことは、ヴァルポリチェッラ編その1で書きましたね。

かなり無理くり入れてくれたアポであることは、電話中「ジャーナリスト、ジャーナリスト」と、何度も繰り返していることからも想像がつきます。

「あー、ブログ以外に発表の宛もないのに申し訳ないなぁ…。クインタレッリを訪問できるなら、もっと色々予習して来るんだったなぁ…」などと、色々思ってみても後の祭り。ここはまな板の鯉で、とにかくプリンセスにとっては世界一のアマローネとレチョートを造る生産者の見せていただけるもの、味わわせていただけるものを、できるだけしっかり全神経を研ぎ澄ませて受け止めたい、と気を引き締めて出かけました。

 

ネグラールのワイナリーで我々を迎えてくれたのは、昨年亡くなったジュセッペの孫にあたるフランチェスコ。どうやらこの日、ジュゼッペ御大の代からのVIP顧客の訪問予定が入っていたらしく、そこに混ぜてもらえた模様。彼らとのテイスティングが始まるまでのほんの数分間、ワイナリーの屋上から一望できる畑を見ながら、幾つか質問をすることができました。 

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ヴァルポリチェッラは楽しい! その1 ニコリス

ヴェローナ駅でピックアップされたのは――2時の予定だったのに――もう4時過ぎていたし、ヴァルポリチェッラ初日はゆっくり宿で休む積りでいました。

そもそも今回の旅は100%観光旅行のはずで、ワイン産地を訪ねるにしろ、取材のようなことはする積りもなく、自転車で産地を走り回り、気候と土壌のアタリでも付けば満足、と思っており、アポも入れていませんでした。


ところが、宿への車中で「今日はこれからワイナリーに行かないのか?」と聞かれてしまいます。「行きたいワイナリーがあれば、連絡をするから遠慮なく言ってくれ」とも。挙句「ワイン・ジャーナリストとワイナリーを訪問すると私も勉強になるし」とまで言われてしまい…。

「そりゃあ、ネグラールで一番行きたいのはクインタレッリ」と臆面もなく言ってみます。

「うーん、ちょっとそれは特別なワイナリーだわねぇ…」と言いつつ、B & Bのオーナー、パオラはiPhoneを取り出し電話。イタリア語は皆目わかりませんが、何度もジャーナリスト“という言葉が挟まれています。そしてなんと、「今からは無理だけれど、明日朝ならOK」…って、「まさか今クインタレッリに電話してた訳?」。

 

…というわけで、あまりにあっけなく翌朝のクインタレッリ訪問が決定。宿への道すがら、勧められるままに、B & Bの隣町にあるNicolisというワイナリーへ。

どうやらパオラとニコリス家は懇意のよう。

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