ヒードラー――それぞれの自然派 その1.  実の中心温度を考慮して収穫

<<前回はウヴェ・シーファーの収穫お手伝い募集告知でした

 

そういう訳で今オーストリアでは全土的に収穫が行われています。

収穫期には何かと様々な案件が重なり、アップが追いついていませんが、収穫の本格化する直前、18日の金曜にヒードラーをカンプタールはランゲンロイスの町外れまで訪れて来ましたので、今日はそのご報告。

 

そう、あの雨の多かった2014年に取り分けいい仕事をしていたと睨んだヒードラーです!

ハプスブルクカラーの黄と濃緑、そしてスペイン人マリア夫人のテイストが生きる白壁+テラコッタのレンガ屋根が調和
ハプスブルクカラーの黄と濃緑、そしてスペイン人マリア夫人のテイストが生きる白壁+テラコッタのレンガ屋根が調和

収穫は既に9月12日から、ムスカットや軽いグリューナーから始まっています。

なので私は奥さんのマリアとランゲンロイスの町で落ち合い、収穫お昼休憩のルードヴィックSr&Jrとヴィルツハウスで合流しました。

 

「午後に収穫の様子を写真に撮らせてね」と、お願いすると「いや、今日はもうお仕舞」とルードヴィック。

 

お天気はピカピカの晴天。なのに何故???

 

…と訝る私に彼は、外気の気温が25℃になると、実はブドウの実の中心部の温度は35度になっている、と教えてくれました。

そして、ブドウの皮が明らかに茶色くなる、所謂”日焼け”を起こす状態まで行くと、ブドウの中心部温度はなんと60度にまで上がっているそう!!!

sun burnt状態の房。焦げたようになってしまうともう成熟しない。味わい上は収穫時の内部温度こそ重要
sun burnt状態の房。焦げたようになってしまうともう成熟しない。味わい上は収穫時の内部温度こそ重要

ところで、ニューワールドなど、本当に収穫期がかなりの高温になる産地では、収穫を夜間や早朝にするのは常識ですが、私はそれを、高温によってブドウの劣化が進むから、と理解していましたし、大抵の教科書の類にもそう書いてあると思います。

 

しかーし!!

 

ルードヴィックが25℃以上での収穫を控えるのは、ブドウが悪くなるからではありません。

ここら辺りの家族経営の生産者の場合、畑からせいぜい1~2km以内にワイナリーがあるのが普通なので、収穫後即座に車で運べば、25℃程度でブドウが劣化する心配は全くありません。

 

問題は風味なのです。

 

ブドウの実の内部温度によって明らかに香味成分が変化するからなのです。そしてこれは、例えば一旦実の中心部の温度が35度以上にまで上がった状態になったとしても、それが恒常的に続かなければ(つまり日焼けを免れれば)、夜中~翌朝気温が下がった時、また元の香味成分の状態に戻るので、望ましい香味成分の状態で収穫するよう心掛けている、とのこと。

この辺りの原理原則も、実際には自分の持ち畑か、そうであるにしても畑の広さ、収穫隊の人員、醸造スペースの広さや機材の数(特にプレスと発酵タンクの数)などのキャパ等々の条件によって、どこまで厳密に実行できるかはワイナリーによって千差万別で、こうした小さな、目に見えにくい作業の積み重ねの差が、実は最終的なワインの質に大きく寄与していることが、ワイナリーの作業を身近で見つつその結果であるワインを試飲する、という作業を繰り返すうち、だんだんよくわかってきました。

 

そして、ヒードラーというワイナリーは、ある種こういった、”小さな””言ってもらわないと見逃しがちな地道な”ブドウ扱いの丁寧さと厳密さでは群を抜いている、と私は見ています。

 

昼食の後、収穫中止により時間のできたルードヴィクと畑周りをし、ラッキーなことにその際、ブドウの実の温度差がもたらす風味の違いを、実際に体験することができました。

 

その様子はまた次回>>